法人化すると個人事業の借入はどうなるか

群馬県の前橋で小規模事業者様の税務・会計まるっと代行を手掛ける、前橋の税理士、清水一臣です。
個人事業から法人化を検討中の方へ、現時点で事業資金の借入はありますか?
法人設立は登記手続きや税務署への届出など、やらなければならないことがたくさんあります。
こういった手続きに比べるとあまり注目されないのが、個人事業時代の借入金です。実はこれ、適切な手続きを行わないと少し面倒なことになる可能性があります。
せっかく法人化して事業を発展させていこうという時に、あとで「あれってどうなるんだっけ」ということがないように個人事業の借入金がどうなるのか?どうすべきなのかについて解説します。
法人化で、個人事業の借入金はどうなるか
法人化すると個人事業の借入金はどうなるのか?
次の2パターンがありますが、銀行によって選べることもあれば、どちらかに決まっている場合もあります。
1:個人で返済を続ける
この場合、法人化に伴う手続きはなく個人で今まで通り返済を続けることになります。今までと同じように個人名義の口座から引落されて返済します。
2:法人が借入金を引き継ぐ
この場合は、手続きをして法人が借入金を引き継ぎます。今まで引落されていた個人口座からは引落がなくなり、法人口座から毎月の返済をします。
どちらのパターンでも注意しなければならない点があります。
個人で返済を続ける場合の注意点
個人で返済を続ける場合は、役員報酬の設定に注意が必要です。
役員報酬は生活費を基準に決めることが多いですが、たとえば下記条件の場合は生活費だけをもとに決めると個人の資金が足りなくなります。
- 生活費30万円
- 個人事業の借入金返済5万円
個人事業のときは売上から経費や税金、借入の返済を引いた残額が個人口座に残り、それが生活費になります。
ところが、生活費30万円で役員報酬を設定すると返済金の5万円が毎月足りなくなります。これは「生活費+返済金」で役員報酬を設定することで解決できます。
それだと社会保険料が高くなってしまう!という方は、よろしければ関連記事もご覧下さい。
法人が借入金を引き継ぐ場合の注意点

このパターンは、個人で返済を続ける場合と比べて少し複雑になります。
たとえば個人事業の借入金が100万円あったとします。法人化に伴い個人で返済する義務は無くなり個人口座からは引落されません。
なぜ個人借入金の返済義務がなくなったかというと、法人がその義務を引き受けた。つまり100万円の借金を法人が肩代わりしたからです。
別の言い方をすると、今までの「銀行から100万円借りている」が「自分の法人から100万円借りている」に変わったのです。
つまり、借入金は無くなっていません。返済相手が銀行から自分の法人に変わったのです。銀行と違って毎月定額を返済する必要はありませんが、そのまま放置もいけません。社長が法人からお金を借りていると法人で借入をする際、審査でマイナスになる可能性もあります。
法人からの借入はすぐには問題にならないけれど放置は危険。ではどうすればいいのでしょうか?返すしかないのですが、銀行への返済と違っていくつかの方法があります。
1:個人のお金に余裕ができたとき返済
先ほど役員報酬は生活費を基準に決めると書きましたが、うまく節約ができたりして多少の余裕が生まれることもあります。そういったときに返せる金額をその都度、法人口座に送金して返済する方法です。
ただし、生活費に余裕ができれば自分の法人への返済より個人貯蓄に回したくなるのが人間の感情です。これは誰でもありうる普通のことですので、法人への返済が遅れる可能性は高くなります。
2:役員報酬から天引きして返済
「天引き」という言葉について説明します。
天引きとは、給料から税金や社会保険料を引いて払うことです。自分の会社であっても役員報酬からは税金などを引いて社長に払わなければなりません。
たとえば役員報酬が30万円ですと、払う額は次のようになります。
役員報酬300,000-社会保険料45,000-所得税6,000=249,000
手取額は249,000です。※税率などは概算
この社会保険や税金と同じように、社長が法人に返すお金を天引きするのです。
先程の例ですと、
役員報酬300,000-社会保険料45,000-所得税6,000-返済金20,000=229,000
この方法の良いところは自動的に返済されますので、さきほどの都度返済のように感情的な葛藤がありません。
これは個人で銀行返済を続ける場合と似ていますが、毎月の返済額をある程度自由に決められる点が大きな違いです。
3:事業用の車などを個人から法人へ売る
自分の車を法人に売る?それが返済になる?イメージしづらいと思いますので順を追って説明します。
事業用資産とは車や工具など事業につかうものです。業種によって色々な種類がありますが、群馬ではほぼ全ての事業で使う車を例にします。
車は法人化した時点では個人名義です。そしてこの車は法人に売ることが可能です。法人と個人は法律上別の存在ですので売却して法人名義にできるのです。
具体的には下記の流れになります。
- 売買の契約をする
- 代金決済
- 車の引渡
- 名義変更
各段階について説明します。
1の売買契約で使う契約書はインターネット上の雛形などでもいいですし、税理士に依頼してもいいです。弁護士に頼むような本格的なものでなくても問題ありません。ここで重要なのは、いくらにするかです。法人特有の考えで「時価」で取引するというものがあります。
時価には色々な考えがあるのですが、ここでは「利害関係のない第三者に売るとしたらいくらにするか」で考えるとわかりやすいです。同じ車種、グレード、年式、走行距離で中古車の価格をネット検索する。又は中古車店などで査定してもらうのがいいです。そして、調べた金額から大幅に上下しない金額を法人に売る価格にします。
2の代金決済は、次のどちらかです。
- 法人口座→社長口座に振り込む
この場合、社長は受け取った車の代金を使って返済ができます。 - 社長が法人から借りているお金と、車の代金を相殺
相殺とは、「法人がお金を返して貰う権利」と「社長が車の代金を貰う権利」を交換することです。これによって返済ができます。
3の引渡は、置いておく場所が変わるわけではないので納車はありません。契約書で決めた日付が引渡日になります。
4の名義変更はご自分でも業者さんでもいいですが注意点があり、それは自動車保険です。自動車保険は無事故が続くと等級が上がり保険料が減りますが、契約主体が法人に変わることで等級がリセットされてしまう可能性があります。
これは事前に保険会社に相談して手続きをすることで等級を引き継げることもありますので、事前に必ず相談をして下さい。
車を売った社長にかかる税金
この方法は車を売った社長に税金がかかる可能性がありますが、50万円の非課税枠や車の所有期間によっては軽減措置がありますので、よほど高額の車でなければ税負担は余り大きくなりません。
「法人化と個人事業の借入金」まとめ
個人事業を法人化する場合、この借入金問題は高確率で発生します。解決方法をいくつか提示しましたが私のおすすめは下記です。
- まず法人へ車を売却
- 残額がある場合は役員報酬から天引き
前橋で税理士をお探しなら、清水税理士事務所へ
群馬の前橋市と前橋周辺で小規模な会社様を全力でサポートするため、初回のご相談は無料で承っております。「こんなこと聞いてもいいのかな?」と思うようなことでも、お気軽にお問い合わせください。しつこい営業は一切いたしません。
※このコラムは2026年11月4日時点の法令等に基づいています。できるだけわかりやすいように数値は概算を使用、法令の詳細も省略しています。そのため、このコラムによって生じた損失に責任を負えないことをご了承ください。
「法人化と個人事業の借入金」に関するよくある質問
「個人で返済を続ける」か「法人が借入金を引き継ぐ」かの2パターンがあります。銀行によって選べることもあれば、どちらかに決まっている場合もあります。
生活費だけをもとに決めると、返済金の分だけ毎月お金が足りなくなります。「生活費+返済金」で役員報酬を設定することで解決できます。
なくなりません。返済相手が銀行から自分の法人に変わっただけです。放置すると法人で借入をする際の審査でマイナスになる可能性もあるため、役員報酬からの天引きや、事業用の車などを法人へ売る方法で返済します。
執筆者紹介

税理士 清水 一臣しみず かずおみ
清水税理士事務所 代表
群馬県前橋市・高崎市を中心に活動する清水税理士事務所、代表税理士の清水一臣です。元営業マンの経験を活かし、社長ひとりや従業員数名の小規模な会社様の税務・会計を「まるっと代行」し、本業に集中できるようサポートしています。





